2007年から特別支援教育がスタートし、認知特性に応じた様々な学習方法や、SST(ソーシャルスキル・トレーニング)、感覚統合療法といった「個」に対する支援が普及するようになってきました。
自閉症児者の治療プログラムとして開発され、日本でも広まるようになってきた「TEACCH(ティーチ)」や「PECS(ぺクス)」などもその一環であり、こうした療育を受けられる環境が整っていくことは非常に大事なことであると思います。
しかし一方で、特別支援教育の理念のもう一つの柱である「共生」という部分はなかなか進んでいないように思われてなりません。
「特別」な支援が重要であると同時に、「特別」な支援を行うわけではない「非専門家」の立場にある人が、いかに関わり合えるようになるかという点も非常に大事な要素なのではないでしょうか。
特に近い将来、「親」や「専門家」といった立場で、発達障がいを抱える子どもたちと接する機会があるかもしれない学生などの若い世代が関わるようになることには大きな意味があると考えており、訪問支援に当たる「サポーター」の育成に力を注いでいきたいと思っています。
そのためには、発達保障のための基本視点をもう少しシンプルに捉え直し、より多くの人がこれであれば実践できそうだと感じられるようなアプローチ方法を伝えていくようにしなければなりません。
発達を保障する上での前提条件となる「基本的な信頼関係(Basic Trust)」を築いていくための 「受容」という姿勢、そして、子どもが自らの世界を豊かに広げていくために必要となる、
という3つの視点を基本に据えながら、「サポーター」の育成研修を行うようにしていますが、そうした若い世代が「訪問」という形で子どもと関わることによって発達障がいのことを少しでも理解し、子どもの変化と成長に「共感」を覚えるようになってくれたらと願っています。
そしてまた、そうした周囲からの共感がさらに子どもを成長させるきっかけとなるのであり、お互いが影響を及ぼし合いながら学び合っていくという姿の中にこそ、「共生」の道が開けてくるものと私たちは考えます。